3.STEP2 耐震診断

旧耐震基準のマンションや、構造上のバランスが悪いマンションは、まずはマンションの耐震性を確認することが重要です。

耐震に関する情報の収集

理事会は、マンションの管理会社やマンション管理士、また地方公共団体の相談窓口に、耐震診断の内容や費用、専門家等の耐震診断にあたっての基礎的な事項について相談しつつ、耐震診断について必要となる情報を収集し、その実施について検討します。
理事会として耐震診断の実施を決定した場合は、耐震診断の専門家に耐震診断の費用の参考見積もりを依頼し、耐震診断の予算化の資料を作成します。

耐震診断に必要な費用

耐震診断に必要な費用は、診断の内容、建物規模、構造などによって異なります。また、設計図書の有無等によっても大きく異なりますので、複数の設計事務所から見積もりを取ることをお勧めします。
(参考)国の助成制度では、二次診断について1000円/m²~2000円/m²程度で算出しています。(平成21年度現在)

耐震診断の予算化

収集した情報を取りまとめて、耐震診断を必要とする理由、耐震診断の内容、耐震診断費用の参考見積もり等を示した上で、管理組合の総会における議案として、「耐震診断資金の拠出方法」について提起します。
耐震診断の予算化は、下表の多数決要件を満たした場合に成立します。

耐震診断の予算化の議案例

  議案内容 議事資料 議決の多数決要件
議案1:耐震診断資金の拠出について (1)管理費から拠出する場合
  • 耐震診断するための資金を管理費(管理組合運営費)から拠出すること
  • その予算額は○○円とすること
事業計画、予算の案 普通決議:区分所有者及び議決権の各過半数
(2)修繕積立金から拠出する場合
  • 耐震診断するための資金を修繕積立金から拠出すること
  • 修繕積立金を取崩して拠出する予算額は○○円とすること
事業計画、予算案
(管理規約「修繕積み立金等の使途の変更案」)
普通決議:区分所有者及び議決権の過半数
(規約変更の必要な場合は、特別多数決議:区分所有者及び議決権の各4分の3以上)
参考資料:耐震診断を必要とする理由、耐震診断の内容、耐震診断費用の参考見積もり等

参考資料:耐震診断を必要とする理由、耐震診断の内容、耐震診断費用の参考見積もり等

耐震診断の実施

耐震診断の専門家の選定

耐震診断については、マンションの建物規模等から、構造設計のできる一級建築士の設計事務所等で、耐震診断のノウハウのある人に調査委託するとよいでしょう。耐震改修支援センター((財)日本建築防災協会)に相談することも出来ます。
なお、補助金等を受ける場合には、事前に地方公共団体に選定手続きについて確認しておく必要があります。

耐震診断の内容

耐震診断は、まず予備調査により、建築物の概要や使用履歴、増改築、経年劣化、設計図書の有無等の内容を確認、耐震診断のレベルの設定等を行います。 その後、現地調査にて、マンションの現況を把握し、設計図書との整合性を確認すると共に、マンションの劣化状況等の診断計算に必要な調査項目を確認します。 調査結果から構造の耐震性の検討・評価を行い、耐震補強案及び概算工事費等を検討します。

予備調査 現地での目視調査、設計図書の内容の確認、建物修繕履歴等を確認し、診断レベルを判断
現地調査 診断レベルに応じて必要な、基礎・地盤、劣化状況、部材寸法や配筋状況、コンクリート強度等の調査を行う
詳細診断 第一次診断
  • 壁の多い建築物が対象
  • 柱・壁の断面積から構造耐震指標を評価
  • 計算の難易度 : 易しい
第二次診断
  • 主に柱・壁の破壊で耐震性能が決まる建築物
  • 柱・壁の断面積に加え、鉄筋の影響も考慮し、構造耐震性能を評価
  • 計算の難易度 : 難しい
第三次診断
  • 主に梁の破壊や壁の回転で耐震性が決まる建築物
  • 柱・壁(断面積・鉄筋)に加えて、梁の影響を考慮し、構造耐震指標を評価
  • 計算の難易度 : 非常に難しい

耐震診断結果の整理、区分所有者への結果報告

耐震診断の結果算出される、構造耐震指標Isの数値により、建物の保有する耐震性能を下表により判定します。(第二次診断・三次診断の場合)

Is値 地震に対する安全性
0.3未満の場合 倒壊し、又は崩壊する危険性が高い。
0.3以上0.6未満の場合 倒壊し、又は崩壊する危険性がある。
0.6以上の場合 倒壊し、又は崩壊する危険性が低い。

Is値が0.6の場合の被害の状況の目安

画像:Is値が0.6の場合の被害の状況の目安

耐震診断の結果は、管理組合広報紙等で報告し、理事会として耐震化が必要と判断した場合には、耐震化の必要性について区分所有者の理解を得るための啓発活動を行い、耐震化の検討の段階に進みます。